こちらのコラムでは、無料で使える情報共有のためのビジネスノートツール「welog(ウィーログ)」の運営スタッフが、ビジネスにおける情報共有やナレッジマネジメントについて発信しています。少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
目次
専門知識やノウハウ、成功事例といった「ナレッジ」を社内で共有し、企業の成長につなげていく経営手法である「ナレッジマネジメント」。「どのようにナレッジマネジメントを進めていけばよいのか」「どういうツール・システムを活用するとよいのか」などが気になる方もいるでしょう。今回は、ナレッジマネジメントの概要や推進するポイントなどを、成功事例を交えながら解説します。ナレッジマネジメントについて学べる本も紹介しているので、参考にしてみてください。
「welog」は、メンバーのノウハウやナレッジを見える化することで
中小企業の属人化問題を解決するドキュメント共有ツールです。
近年、注目度が高まっている「ナレッジマネジメント」。ナレッジマネジメントとは、どのようなものなのでしょうか。ここでは、ナレッジマネジメントの概要や基礎理論、ナレッジマネジメントが重視される理由などについて紹介します。
ナレッジマネジメントとは、専門知識やノウハウ、成功事例といった「ナレッジ」を社内で共有し、企業の成長につなげていく経営手法のこと。日本語に訳すと、「知識管理」または「知識経営」となります。ナレッジマネジメントと似た言葉として「ナレッジ共有」がありますが、「ナレッジ共有」は文字通り、ナレッジを社内で共有することを意味します。ナレッジマネジメントに欠かせないステップの1つが、ナレッジ共有だと理解するとよいでしょう。
ナレッジマネジメントには、「業務の属人化の防止」や「業務の効率化」「社員のスキルアップ」「部署間の連携強化」といった効果があるとされています。また、同様のメリットが、ナレッジ共有にもあります。
一方で、「特定の社員に専門性の高い業務が集中しているため、その人が急に休んだときに業務が回らない」「業務に無駄が多い」「新入社員や若手社員の成長が遅い」といった課題を抱えている企業も少なくないでしょう。そうした課題の一因として、「ナレッジマネジメントがうまく機能していない」「そもそも、ナレッジマネジメントが行われていない」ことが考えられます。
ナレッジマネジメントを効果的に行うことは、企業が抱えるさまざまな課題のを解決や、イノベーションの創出にもつながります。それにより、企業は長期的・安定的に成長し続けることができるでしょう。
ナレッジマネジメントをする際、まず理解しておきたいのが、ナレッジの種類です。ナレッジは一種類ではなく、「暗黙知」と「形式知」に分類されます。それぞれの定義はどのようなものなのか、実際に見ていきましょう。
「暗黙知」とは、言語化されていない属人的なナレッジのこと。例として、特定の業務を効率的に行うための「コツ」や、ベテラン社員が長年の経験により習得した「ノウハウ」などが挙げられます。ナレッジが暗黙知のままだと、社内に共有しにくく、企業の成長にはなかなか結びつきません。
「形式知」とは、「暗黙知」を言語化したナレッジのことです。具体的には、「社内Wiki」や「業務マニュアル」「顧客データ」などが該当します。言語化されているため、誰でも理解しやすいというのが、形式知の特徴です。
先ほど紹介した「ナレッジ共有」は、いわば「暗黙知」を「形式知」に変換する作業です。そして、共有したナレッジを元に、企業の成長を図ることこそが「ナレッジマネジメント」の目的と言えます。ナレッジマネジメントを行うためには、「暗黙知」から「形式知」へ変換する作業が必要になると、理解するとよいでしょう。
近年では、雇用の流動化が進み、転職が当たり前となっています。また、変化・競争の激しい時代を企業として生き抜くためには、イノベーションの創出が必要です。そうしたことを鑑みると、「ナレッジが属人化している」「ナレッジが社内で共有されていない」といった状況は、企業にとって望ましくないことがわかります。時代の変化に迅速に対応し、企業として成長を続けていくためには、ナレッジマネジメントが不可欠です。
加えて、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、在宅勤務を始めとする「テレワーク」を導入する企業が急増しています。テレワーク環境下では、社員一人ひとりが別々の場所で仕事をするため、どうしても「業務の属人化」や「コミュニケーションの減少」が進みがちです。こうしたテレワークの課題を解決する手段としても、ナレッジマネジメントは注目されています。
ナレッジマネジメントには、「顧客知識共有型」「専門知識型」「経営資本・戦略策定型」「ベストプラクティス共有型」の4つの方法があります。それぞれの方法について、見ていきましょう。
顧客知識共有型とは、顧客からの意見・クレームや顧客対応の履歴などをデータベース化し、顧客対応の業務プロセスの最適化を図る方法です。顧客からの問い合わせやクレームに対する最適な対応例を共有することにより、スムーズな顧客対応が実現します。担当者や担当部署による顧客対応の差がなくなることで、顧客満足度も向上するでしょう。
専門知識型とは、社内外の専門知識をデータベース化し、業務で必要な情報を簡単・迅速に入手できるようにする方法です。情報の入手を容易にするためには、頻繁に質問を受ける項目をFAQにまとめます。情報システム部やヘルプデスクなどの部署に集まった、社内外からの問い合わせ内容をFAQ化することにより、問い合わせ業務の軽減・時間短縮や、コア業務への注力といった効果が期待できます。
経営資本・戦略策定型とは、さまざまな知識を多角的に分析し、経営戦略の策定に活用する方法です。DWH(データウェアハウス)やデータマイニングツールなどのツールを用いて、自社や競合他社の分析を行います。業務プロセスを一から洗い直すことができるため、「業務改善のポイントを見つけやすくなる」「業務プロセスを再検討しやすくなる」といった効果が期待できます。
ベストプラクティス共有型とは、特に優秀な社員の行動パターン・思考パターンを形式知化し、共有することにより、組織全体のスキルの底上げを図る方法です。優秀な社員の「暗黙知」を「形式知」に変えることで、いわゆる「勝ちパターン」を再現できる可能性がある社員が増え、「勝ちパターン」の再現性向上が期待できるでしょう。
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ナレッジマネジメントに成功した企業の事例を紹介します。
富士ゼロックス株式会社は、日本でいち早くナレッジマネジメントを導入した企業として知られています。1990年代、社内では「製品開発の最終段階で設計変更になり、開発期間が延びる」という問題が頻発していたそうです。この問題の背景には、「後半の行程を担当する社員が、意見を出せるのは自分たちに作業が回ってきたときに限られる」という状況がありました。
そこで、後ほど紹介する「SECIモデル」を導入します。設計の初期段階で全担当者が情報を共有し意見を出す「全員設計」というコンセプトを打ち出した上で、大人数が効率的に情報共有するために「Z-EIS」という独自のシステムを構築。このシステムでは、設計者や技術者たちのノウハウを言語化したものをインプットし、インプットされた知識を各工程の責任者がチェックします。社内に共有すべき優れた知識のみをシステムに残すことで、形式知のブラッシュアップも実現されました。このようなナレッジマネジメントの徹底により、同社は製作過程の無駄を省くことに成功したようです。
「SECIモデル」とは、知識創造のための継続的なプロセスモデルのことで、ナレッジマネジメントの基礎的な理論として有名です。「共同化(Socialization)」「表出化(Externalization)」「連結化(Combination)」「内面化(Internalization)」の4つの言葉の頭文字から名付けられました。
「SECIモデル」では、「暗黙知」が「形式知」に変換され、「形式知」同士が組み合わさり新たな「形式知」が誕生します。その「形式知」をもとに社員一人ひとりが行動することで新たな「暗黙知」が生まれ、それが再び「形式知」になっていくというプロセスが繰り返されます。以下では「SECIモデル」の4つのプロセスについて、見ていきましょう。
「共同化」とは、共通経験を通じて、個々人の「暗黙知」への理解を深めるプロセスです。「師匠の作業を見て、弟子が技術を学ぶ」という場面に代表されるように、個人間で暗黙知の伝達・獲得が行われます。暗黙知は他人に共有しにくい知識であるため、このプロセスでは「経験の共有により、理解を深めること」が重視されます。
「表出化」とは、「共同化」で理解を深めた「暗黙知」を「形式知」に変換するプロセスです。複数人での熟考・議論を重ね、「言葉・文章」「図表」といった形で、共通の「暗黙知」を客観的な「形式知」へと転換します。形式知に変換する際に認識のズレが生じないよう、論理的な話し合いを心がけることが重要です。
「連結化」とは、「表出化」で生まれた「形式知」を他の「形式知」と組み合わせ、新たな「形式知」を創造するプロセスです。形式知単体では、組織内で十分に機能させるのは難しいと言われているため、「表出化」の後には、確実に「連結化」を行う必要があります。このプロセスを経ることで、体系的・総合的なナレッジが作り出され、組織全体で活用できる「知的財産」へと変化します。
「内面化」とは、「連結化」により活用可能となった「形式知」をもとに、新たな「暗黙知」を生み出すプロセスです。一人ひとりが形式知を実務に取り入れることで、暗黙知へと変化します。暗黙知へと進化した知識は、「共同化」により他者と共有され、「表出化」や「連結化」を経て再び「内面化」されます。
「共同化」から「内面化」までの一連のプロセスを繰り返すことで、新たなナレッジやイノベーションの創出につながっていくでしょう。
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ナレッジマネジメントを円滑に進めていくためには、どのような工夫が必要になるでしょうか。ナレッジマネジメントを推進するポイントを紹介します。
ナレッジマネジメントの前提となる「ナレッジ共有」の文化がない企業の場合、まずは「何のためにナレッジ共有するのか」を社員に理解してもらうことが重要です。「社員間の負担の偏りをなくしたい」「業務の効率化を図りたい」といった目的を社内で共有しましょう。加えて、全社を挙げて実施するものであることを、社員に知ってもらうことも大切です。「経営陣が率先して、ナレッジを共有する」「ナレッジマネジメントの成果を社内に共有する」といった取り組みを検討しましょう。
ナレッジによっては、特定の業務・期間しか活用しにくいできないものもあるかもしれません。ナレッジマネジメントを円滑に行うためには、どのような情報を共有すべきかを明確にすることも重要です。「さまざまな業務、部署、場面で活用できそうか」「長期的に役立つノウハウか」という観点から、ナレッジ共有する情報の範囲を定めましょう。
「ナレッジ共有」を社内に浸透させるためには、ナレッジを共有する環境を整えることも重要です。ナレッジ共有が活発化するよう、ナレッジ共有に特化したツールやシステムの活用を検討しましょう。操作が簡単で、全社員が使いやすいものがおすすめです。
「ナレッジ共有」を社内文化として根付かせるためには、「ナレッジを共有しやすい制度を整える」ことも必要です。「ナレッジ共有が一番多かった社員・チームを表彰する」「ナレッジ共有の回数に応じて、インセンティブを支給する」などの対応を検討してみましょう。
多くのナレッジが集まってくるようなった際、注意したいのが「ナレッジが多すぎて、必要なナレッジを探すのに時間がかかる」という問題です。この問題が恒常化すると、ナレッジを探したいと思う社員が次第に減っていくため、対策を考えなければいけません。「ナレッジをカテゴリー分けする」「ナレッジ検索が簡単にできるツール・システムを導入する」といった対応により、検索の簡易化・迅速化を図りましょう。
ナレッジマネジメントについて学べる本を、3冊紹介します。
知識創造企業【新装版】(東洋経済新報社:野中郁次郎/竹内弘高著、梅本勝博訳)
10カ国語以上の言語に翻訳され、世界のビジネスに多大な影響をもたらした、経営学の世界的名著。経営学の分野に知識というコンセプトを持ち込むことで、日本企業におけるイノベーションのメカニズムを解明しています。四半世紀の時を経て、読みやすくなって再登場した1冊です。
(新装版)「経験知」を伝える技術(ダイヤモンド社:ドロシー・レナード/ウォルター・スワップ著、池村千秋訳)
ベテラン社員や専門家の「経験知」をどのように組織内に移転していくかを解説した1冊。「経験知」が形成されるプロセスを観察し、その方法論を解明しています。モノ作りに携わる企業や、「若手人材育成」「組織内の知識共有」を課題とする方におすすめの本です。
無印良品は、仕組みが9割 仕事はシンプルにやりなさい(角川書店:松井忠三著)
38億円の赤字からの「V字回復」を実現した経営者が、仕事の哲学について語った1冊。2000ページにも渡る「マニュアル」や、それを使った「誰でも成果を上げられる仕事の仕組み」を構築することの重要性などを紹介しています。ナレッジマネジメントをより実践的に理解したい方は参考にしてみてください。
「ナレッジ共有」を企業の成長につなげていく経営手法である「ナレッジマネジメント」には、「業務の属人化の防止」や「業務の効率化」といったメリットがあります。ナレッジマネジメントの4つの方法や、「SECIモデル」を活用し、ナレッジマネジメントを進めましょう。ナレッジマネジメントを推進するためには、「目的を共有する」「どのような情報を共有すべきかを明確にする」などのポイントを意識することが重要です。ナレッジマネジメントの推進により、企業の生産性向上を図ってみてはいかがでしょうか。
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