こちらのコラムでは、無料で使える情報共有のためのビジネスノートツール「welog(ウィーログ)」の運営スタッフが、ビジネスにおける情報共有やナレッジマネジメントについて発信しています。少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
目次
「KPT法」とは、プロジェクトなどの課題分析や改善に役立つ、振り返りのフレームワークです。KPT法のメリットや、やり方について知りたい方もいるのではないでしょうか。今回の記事では、具体例を挙げながらKPT法について解説しています。ファシリテーターの役割や、効果的にKPT法を使うポイントについてもご紹介していますので、ぜひお役立てください。
「welog」は、メンバーのノウハウやナレッジを見える化することで
中小企業の属人化問題を解決するドキュメント共有ツールです。
振り返りのフレームワークとして知名度の高い「KPT」は、以下の3つの言葉の頭文字をとった言葉で、「ケーピーティー」または「ケプト」と呼ばれています。
・Keep(よかったこと・継続すること)
・Problem(問題点・改善点)
・Try(新しく挑戦すること)
上記の3つの視点で振り返りを行うKPT法は、問題点やアイデアを分類したり、関連付けたりしながら思考を深めることを目的として使われています。日本では、ソフトウェアなど短いサイクルで設計〜テストを繰り返す「アジャイル開発」における、チーム開発での振り返り手法としても広まっており、論理的な思考を促すのに効果的なフレームワークの一つです。
KPT法と同じく、振り返りに用いるフレームワークとして「YWT法」があります。YWT法は、「Y:やったこと」「W:わかったこと」「T:つぎにやること」の3つの要素からなるワークで、KPT法とは目的が異なります。
KPT法の目的は「目標達成」や「問題点の改善」ですが、YWT法は経験から得た自身の学びを落とし込むことを通じた、「自己の成長促進」を目的としています。チームで取り組むプロジェクトの改善を目指す場合はKPT法、経験を整理するための個人的な振り返りの場合はYWT法のように、目的に応じて使い分けるとよいでしょう。
KPT法のメリットは、主に「課題の早期発見や解決」「組織やチーム力の強化」の2点です。それぞれ具体的にご紹介します
KPT法を使うことで、プロジェクトの問題点や課題の早期発見といった効果が期待できます。あらかじめ決めておいたサイクルに沿って定期的に実施することで、まだ顕在化していない課題も認識することにつながるでしょう。
チーム全員でKPT法を使った振り返りを行うことで、メンバー間の温度差をなくし、チーム力を強化することや生産性の向上にもつながります。課題を共有し、アイデアを出しながら改善策を考えるプロセスを通じて、メンバーの主体性を養うこともできるでしょう。
KPT法は付箋に書く方法で自分の意見を出すこともできるため、アウトプットがしやすく、チーム内のコミュニケーションの促進も期待できます。
定期的な振り返りがないと業務を惰性で進めてしまったり、モチベーションが下がってしまったりといったことが起きやすくなります。KPT法を使った振り返りを行うことで、「もっとよくしよう」という改善の意識をメンバーに定着させましょう。
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実際に、KPT法の手順についてご紹介します。KPT法はケースに応じてさまざまな進め方がありますが、ここでは基本的な進め方を例に挙げています。
メンバーが対面で行う場合は、ホワイトボードや紙を用意します。スペースを3つに区切って、それぞれに「Keep」「Problem」「Try」と記載しましょう。
情報共有ツールやタスク管理ツールなどのクラウドツールを使用すると、オンライン上でKPT法を使った振り返りを行うこともできます。対面で実施するときと同じように、表や見出し機能を使って3つのエリアを作成しましょう。
まず、「Keep」「Problem」のエリアから埋めていきます。継続することやよかったこと、課題に感じていることを付箋などに書き出し、該当するエリアに貼っていきましょう。ここでは、深く考えすぎず、思いついたことを次々とアウトプットしていくことが大切です。
各自のアウトプットが終わったら、貼り出された「Keep」「Problem」を見ながらディスカッションを行います。それぞれの付箋に書いたことを説明したり、気になる付箋について質問したりと内容や原因を掘り下げていきましょう。付箋に書かれていることの背景に、改善策のヒントがあるかもしれません。意見を出すときはなぜそう思うのか、理由についても説明しましょう。
ディスカッションの中で浮かび上がってきた問題や改善点に対して、どのような対策や行動をとるのかを「Try」に書き出しましょう。ここでは、具体的なアクションに落とし込むことが重要です。「Problem」への対策のほか、「Keep」をさらによくするためのアクションもよいでしょう。
KPT法ではどのような内容を書き出すとよいのか、イメージしにくい方もいるのではないでしょうか。以下では「Keep」「Probrem」「Try」の、それぞれの項目を埋めた具体例をご紹介します。今回は、業務管理についての振り返りを想定した内容で作成していますので、イメージの参考にしてください。
《例》
【Keep】
・依頼内容の急な変更があったが、チームで協力して対応することができた
・時間管理表を作成したことで、どの作業にどのくらい時間がかかっているのか明確にできた
【Problem】
・チーム内でそれぞれ分担している業務の進捗状況がわかりにくい
・納品が締め切り間際になってしまった
【Try】
・業務内容の一覧表を作成して全員で共有、進捗状況に合わせてステータスを変更する
・工程を細分化し、各工程ごとに締め切りを設定する
「Keep」「Problem」では、気づいたことや具体的なできごとを書き出しましょう。問題点の理由や目指すべき状態についてディスカッションし、具体策として「Try」を生み出すことが重要です。
KPT法を使っても、「意見が出にくい」「改善策がまとまらない」というように、思っていたほどうまくいかないと感じている方もいるのではないでしょうか。ここでは、KPT法を効果的に行うためのポイントをご紹介します。
KPT法では、参加者が安心して意見を出せるような環境づくりが大切です。参加者の中には自分の意見を出すことにためらいを感じてしまうメンバーもいるでしょう。ワークを始める前に、些細なことでもよいので書き出すよう説明すると、参加者の迷いを減らすことができます。
また、他の人の意見を否定や批判するような発言は避けるように配慮することで、意見を出しやすい雰囲気を作ることができるでしょう。
ディスカッションの進行を担うファシリテーターを決めておきましょう。KPT法におけるファシリテーターの役目として、意見を引き出す問いかけを行うことが挙げられます。「Try」につながりそうな重要な課題について十分にディスカッションがなされるよう、議論の軌道修正をすることも意識しましょう。一般的にはプロジェクトのリーダーが担当し、時間配分も意識しながら進行します。
KPT法は、1回のワークですぐに効果が得られるものではありません。1週間ごとや1カ月ごとの振り返りを継続することで、少しずつ課題が改善されていく実感が得られるでしょう。前回の「Try」で決まった改善策を検証し、PDCAを回しながらよりよい方法を見つけていくことが重要です。
最後に、KPT法の理解に役立つ本をご紹介します。
ソフトウェア開発の導入におけるコンサルティングに携わってきた著者が、実践の中で得たKPT法に関する知識をわかりやすく解説しています。KPT法の概要や方法、コツなどKPT法について網羅されている内容で、KPT法を初めて知るビギナーにもおすすめの1冊です。
KPT法をはじめとして、会議におけるアイデア出しや意思決定などで使える、70種のフレームワークを紹介しています。各フレームワークの記入例をわかりやすく図で示しており、フレームワークを通して有益な気づきを得るためのポイントがまとめられています。ほかのフレームワークと比較することでKPT法の特徴をより深く理解することができるでしょう。
KPT法を使った振り返りを定期的に実施することで、課題を早期に発見し、解決へと導くことができます。「Keep」「Problem」「Try」の3つの枠が決まっていることで内容が整理されるので、テレワークなどオンラインでのディカッションにも大いに役立つでしょう。状況にあわせて「welog」などのクラウドツールも活用しながら、KPT法を実施してみてはいかがでしょうか。