こちらのコラムでは、無料で使える情報共有のためのビジネスノートツール「welog(ウィーログ)」の運営スタッフが、ビジネスにおける情報共有やナレッジマネジメントについて発信しています。少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
目次
意思疎通のために生じる時間・労力である、コミュニケーションコスト。コロナ禍で在宅勤務が普及したこともあり、「コミュニケーションコストが高くなったと感じている」「どのようにすれば、削減することができるのか知りたい」といった方も多いのではないでしょうか。今回は、コミュニケーションコストの意味や影響、個人・企業ができる6つの対策などを紹介します。
「welog」は、メンバーのノウハウやナレッジを見える化することで
中小企業の属人化問題を解決するドキュメント共有ツールです。
社内でコミュニケーションをとる際、「誰に何を聞いたらよいのか、わからない」「相手の話した内容を、なかなか理解できない」といった経験がある方も少なくないでしょう。これまでコミュニケーションに問題がなかった組織でも、コロナ禍における在宅勤務の普及に伴い、「メンバー同士の意思疎通がスムーズにできなくなった」というケースも珍しくありません。そのような場合に、見直す必要があるのが「コミュニケーションコスト」です。コミュニケーションコストの意味やその影響などを紹介します。
コミュニケーションコストとは、日本語に言い換えると、「意思疎通のために生じる時間・労力」のことです。具体的には、「上司が部下に仕事を頼む際にかかる時間」や「業務内容の不明点について、新入社員が先輩社員に相談する時間」などが挙げられます。
メンバー同士の意思疎通にかかる時間が多いほど「コミュニケーションコストが高い」状態、少ないほど「コミュニケーションコストが低い」状態であると言えます。
「コミュニケーションコストが高い」状態とは具体的にどのような状態なのか、代表的な3つのケースを見ていきましょう。
仕事で何かわからないことや迷ったことがあった際に、「誰に相談したらよいのかわからない」「何人に聞いても、不明点がクリアにならない」という経験がある方も少なくないでしょう。このように、「相談すべき相手がわからず、いろいろな人に聞いて回る状態」は、コミュニケーションコストが高い状態と言えます。
特に、新入社員や部署異動したばかりの社員など組織やチームに入ったばかりの社員は、こうした状態に陥ることが多いでしょう。また、長く働いている社員でも、組織改編や新規プロジェクトの発足といったタイミングで「●●の担当は誰だろう」「▲▲に関する資料はどこにあるのだろう」といった疑問が浮かび、いろいろな人に聞いて回ることが考えられます。
コミュニケーション方法には、口頭での会話や電話、メール、チャットなどがありますが、そこでの「情報の発信や受信といった情報伝達に手間がかかっている状態」も、コミュニケーションが高い状態の一例です。例として、「何度かけても、電話がつながらない」「メールの送信作業に時間がかかる」「チャットの使い方がよくわからない」「全て書面での情報伝達のため、重要な情報が現場に届くまでに数日かかる」といったことが挙げられます。
こうした状態は、情報伝達のための手段が「整備されていない」もしくは「使いこなせていない」ことが原因です。加えて、コロナ禍により、在宅勤務を始めとするテレワークが急速に普及したことも、情報伝達にかかる時間を増やす原因と考えられます。「チャット」や「情報共有ツール」といったリモートでのコミュニケーション手段を効果的に活用できていないと、スムーズな意思疎通が困難となってしまうのです。
情報を伝達しているのにもかかわらず、「内容が正しく伝わらない」「伝えた内容を理解してもらえない」状態も、コミュニケーションコストが高い状態と言えます。発信した情報が受け手に正確に伝わらなかったり、受け手によって理解した内容がばらばらだったりといったように伝達内容について認識の齟齬が生じると、再度、情報を伝えなくてはなりません。
伝達内容について認識の齟齬を生む原因は、使っている用語や文章の書き方などが受け手にとってわかりづらいものになっていることや、受け手側の理解力不足にあります。例として、「専門用語や社内用語を多用していて、内容を正確に理解できる人が限定される」「長文が続き、本当に重要な内容がどこに書かれているのかわからない」「入社から日が浅く、業務内容への理解が乏しい」といったことが挙げられます。
意思疎通の際に生じていた、「複数人に聞いて回る」「同じことを再度伝える」といった無駄な時間を削減できれば、本来やるべき業務に集中できるようになります。言い換えると、コミュニケーションコストが低ければ低いほど業務が円滑に進むようになり、仕事の生産性が向上します。生産性向上を目指している場合には、コミュニケーションコストの削減に取り組んでみてもよいでしょう。
しかし、コミュニケーションコストは必ずしも、最小限にするのが望ましいというものではありません。コミュニケーションコストを削ろうとするあまり、従業員同士の日常のコミュニケーションまで制限してしまうと、人間関係や職場の雰囲気に悪影響を及ぼしかねません。結果的に企業にとって不利益をもたらす可能性もあります。従業員にとって働きやすい職場環境を維持するために必要なコミュニケーションまで削らないように注意しましょう。
コミュニケーションコストは、組織経営にも直結する重要なものだとされています。
従業員全員が同じベクトルに向かって業務に取り組んでいくためには、社長や経営陣の考え・意見を社内全体に浸透させることが重要です。「社長や経営陣の考え・意見がなかなか現場に届かない」「組織の階層間の伝言ゲームで、経営方針が一般社員に正しく伝わらない」といったようにコミュニケーションコストが高い状態だと、従業員にメッセージが正確に届くのに時間がかかってしまい、結果的に組織経営に悪影響が及ぶでしょう。そのため、企業のトップから全従業員への情報伝達においても、コミュニケーションコストの削減を検討する必要があります。
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コミュニケーションコストを高いまま放置すると、どのような事態に陥るのでしょうか。コミュニケーションコストが高いことによって生じる4つの問題について、紹介します。
コミュニケーションコストが高いままだと、本来進めるべき業務が滞っている状態が続くため、業務効率が低下します。コミュニケーションに時間を費やしている間は、業務が一時的にストップしてしまうためです。その結果、生産性も低下し、企業経営にも悪影響をもたらすでしょう。
多くの企業において、「一人だけで完結できる業務」は限られており、大半が「チーム内・チーム間の連携が必要な業務」でしょう。コミュニケーションコストが高い状態が続くと、「上司・部下間、チーム間の連携がとれない」という問題が生じます。その結果、チームワークの低下やプロジェクトの進捗遅れなどにつながる可能性があります。
通常、組織内における重要な意思決定は、現場の状況を考慮した上で行われます。コミュニケーションコストが高い状態が続くと速やかな現状把握が難しいため、最終的な意思決定までに要する時間が増すでしょう。意思決定を適切なタイミングで行えないため、ビジネスの好機を逃したり、他社に遅れをとったりしてしまう可能性があります。
「相手に、なかなか話が伝わらない」「不明点を誰に聞いたらよいのかわからない」といったコミュニケーションコストが高い状態は、当然ながら、従業員にとってストレスとなります。コミュニケーションコストが高いままだと、従業員の精神的負担は日に日に増大するでしょう。その結果、仕事に対するモチベーションの低下が懸念されます。加えて、コミュニケーションコストが高い状態が続くと、従業員がコミュニケーション自体を諦めてしまうこともありえます。コミュニケーションコストが高いことの弊害として、「そもそもコミュニケーション自体が行われない」という最悪の状態が起きる可能性があるのです。
コミュニケーションコストに課題を感じている企業の場合、社内に「コミュニケーションコストがかかる人」がいる可能性があります。「コミュニケーションコストがかかる人」の特徴について、見ていきましょう。
理解力が低く、情報の処理に時間がかかる人は、「コミュニケーションコスト」が高くなりがちです。業務経験や専門知識などの有無により、理解力の程度に差があるのは、致し方ないことです。そのため、個々人の理解力を把握した上で、一人ひとりに合った伝え方を心がけることが重要になります。理解力不足を個人の問題ではなく、組織全体の問題と捉えて、対策を検討していけるとよいでしょう。
当然ながら、コミュニケーションは双方向で行われてこそ、価値のあるものです。そのため、業務中に相手の話を聞かずに一方的に自分の話をしたがる人も、「コミュニケーションコストがかかる人」と言えます。相手の話をきちんと聞かないと、相手が伝えたいことへの理解が不十分となり、結果的にコミュニケーションコストが増加するのです。自分の話ばかりをしたがる人の例として、「相手の話を遮って、自分の話を始める人」や「今話さなくてもよいことまで、業務中に話す人」などが挙げられます。
「自分はどういう立場か」「どういった役割が求められるのか」が理解できていない相手に対しては、話の前提となる内容についても説明しなくてはいけません。そのため、組織内における自分の立場・役割を理解していない人は、「コミュニケーションコストがかかる人」と言えます。特に、組織変更や部署異動を頻繁に行う企業においては、こうした人が少なくないでしょう。
組織的な問題により、コミュニケーションコストが高い状態が続くこともあります。コミュニケーションコストが高い組織の3つの特徴について、紹介します。
社内教育が行き届いておらず、従業員間のリテラシーの差が大きい場合には、「コミュニケーションコストが高い組織」と言えます。このような企業では、「同じ質問が何度も飛び交い、業務がなかなか進まない」「話の前提となる内容を理解している社員が少ない」といったことが常態化しているでしょう。
口頭や紙など、情報伝達の手段が限られていることが原因で、コミュニケーションコストがかさむことも少なくありません。そのため、情報共有ツールや社内wikiといった情報伝達の仕組みができていない組織も、「コミュニケーションコストが高い組織」とされています。また、情報伝達の仕組みはあるものの十分に活用しきれていない場合も、コミュニケーションコストが高いと言えるでしょう。
組織内で自分の考え・気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態である「心理的安全性」が低い組織も、「コミュニケーションコストが高い組織」と言えるでしょう。例として、「上司が威圧的で、報連相するのに抵抗がある」「上下関係が厳しく、新人は意見を言うことを許されない」「わからないことを質問したら、周囲から馬鹿にされそう」といった雰囲気のある職場が挙げられます。
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「コミュニケーションコストが高い組織」について紹介してきましたが、「自社のコミュニケーションコストはどのくらいなのか診断したい」「人数が増えることで、コミュニケーションがどう増えるか知りたい」といった方もいるのではないでしょうか。コミュニケーションコストと関係の深い、「ブルックスの法則」について紹介します。
ブルックスの法則とは、端的に言うと、「遅れているプロジェクトへの要員追加は、プロジェクトをさらに遅らせるだけである」という法則のことです。この法則が成り立つ背景には、「要員の追加によるコミュニケーションコストの増大」があります。
一般的に、 n人が協調して仕事を進めるためには、 n(n-1)のコミュニケーションチャネルを調整する必要があるとされています。そのため、人数の増加の2乗分のコミュニケーションコストがかかることになります。
例えば、メンバーを2倍にした場合には2の2乗で「4倍」のコミュニケーションコストが、メンバーを3倍にした場合には3の2乗で「9倍」のコミュニケーションコストがかかります。要員の増加とコミュニケーションコストの増大は、単純な比例関係にはないことを理解するとよいでしょう。
そのため、実際にプロジェクトの要員を増やす際には、「コミュニケーションコストの増加も見越した上で、何人の増員が必要かを検討する」「一人あたりのコミュニケーションコストを下げていく方法を考える」といった工夫が重要となります。
コミュニケーションコストを減らすために、個人として意識できることについて、紹介します。
「話の内容を思い込みで解釈してしまった/解釈されてしまった」という経験がある方もいるかもしれません。このように思い込みに基づくやり取りが行わると、相手との認識の不一致が生じ、かえってコミュニケーションコストがかかってしまいます。余計なコミュニケーションコストが発生しないよう、相手の話をよく聴き、伝えたい内容を正しく理解することを意識しましょう。その上で、話の内容を行動に移したり、自分なりの回答を返したりすることが大切です。
聞き手・話し手の双方が、「5W1H」を意識することも、コミュニケーションコストを減らすためには必要不可欠です。「5W1H」とは、コミュニケーションの基本である「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(だれが)」「What(なにを)」「Why(なぜ)」「How(どのようにして)」の5つの要素のこと。「5W1H」に基づき情報を整理することで、「相手が伝えたいこと」「自分が伝えたいこと」がより明確になり、情報の伝え漏れや聴き漏れが避けられます。コミュニケーションコストが高いと感じている場合には、5W1Hを基に情報を整理することも意識しましょう。
「相手の話をよく聴く」「5W1Hで情報を整理する」を意識しても、コミュニケーションコストが変化したという実感がない場合には、「話しかけやすさ」や「心理的安全性」に目を向けてみるとよいでしょう。コミュニケーションの基本である「聴くこと」「話すこと」ができていても、「話しかけやすさ」「心理的安全性」がないと、社内に「相談できずに、課題を抱え込んでしまう」「相談が遅れた結果、トラブルに発展する」といった問題が生じる可能性があるためです。
コミュニケーションが取りやすい職場の雰囲気作りのためには、話しかけやすい環境作りを一人ひとりが意識するようにしましょう。具体的には、「周囲に対して、威圧的な発言をしない」「気分によって、言動を変えない」「相手の発言を否定したり、間違っていることを馬鹿にしたりしない」などを意識することが大切です。
「welog」は、メンバーのノウハウやナレッジを見える化することで
中小企業の属人化問題を解決するドキュメント共有ツールです。
コミュニケーションコストを減らすために、組織全体として行うべき対策について、紹介します。
チーム内における業務に関するやり取りが、個人間のやり取りや参加者を限定した会議などでのみ行われていると、「質問したいことについて詳しいのは誰か」が不明確になり、「誰に質問したらよいのかわからない」「質問がたらい回しになる」という事態が生じます。そのため、コミュニケーションコストを減らすためには、組織全体で「社内コミュニケーションをオープンな空間で行う」ことを意識するのが効果的です。業務に関係ない個人的なやり取りを除いては、チーム全体を対象としたグループチャットや会議などで日頃から情報交換するようにしましょう。
コミュニケーションコストが高い一番の要因が「従業員間のリテラシーの差」である場合には、社内教育を充実させ、理解力を向上させていくことが重要です。「誰を対象に」「どの程度の知識を」身に付けてもらう必要があるかを考えた上で、座学研修やOJTなどを立案・実施し、従業員間のリテラシーの差を埋めていきましょう。
「情報伝達の仕組みが整備されていない」ことが原因でコミュニケーションコストが高い場合には、ツールを活用し、ナレッジ共有の仕組みを整えることが重要です。利用目的や操作性、フリープランやトライアル期間の有無などを考慮した上で、自社に合った「ナレッジ共有・社内wikiツール」や「FAQツール」を選択しましょう。
福岡県にある社労士事務所「つくし社会保険労務士事務所」では、以前は情報共有の際に代表が従業員に口頭で指示を伝えた後で、従業員がメモを作成するという形を取っており、情報共有に課題を感じていました。そこで、共通認識を持って仕事を進められるようにすることを目的に、welogを導入。welog上で情報共有を行うようにしたことで、コミュニケーションコストや仕事上のミスが減り、「共通認識を持って仕事を進められる」状態になりつつあると言います。
welogを導入して議事録などメンバーへの連絡事項を残す場所が明確になった結果、チームやメンバーが過去の情報にたどり着きやすくなり、認識のズレが生じづらくなるといった嬉しい効果が生まれたようです。また、タスクのチェックリストを作成して共有することで、作業内容や進捗が確認しやすくなり、チーム全体のタスクの抜け漏れが減るといったメリットも。これまでは社員の問い合わせに対するフォローに多くの時間を割いていましたが、welogの活用によりこれらの手間や時間が削減したと感じているそうです。
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介護のICT導入に役立つ情報発信メディア「介護のコミミ」を運営する「株式会社Giver Link」では、以前は情報共有のルールが定まっておらず、組織拡大に伴いコミュニケーションコストが増大するなど、情報共有の課題が顕在化していました。そこで、これらの課題を解決するために、welogを導入。ルールの新設や変更などに関する情報をwelogにまとめたことで、「welogに書いておいたから読んでおいて」と言えば社内に周知できるようになり、コミュニケーションコストの削減効果を実感しているそうです。
関連記事:事例紹介『株式会社Giver Link|「welogに書いたから読んでおいて」で情報共有コストを大幅に削減』
コミュニケーションコストが高い状態が続くと、「業務効率の低下」や「意思決定の遅れ」といった問題を引き起こします。コミュニケーションコストを減らすには、個人も企業も意識を改め、対策を行っていくことが重要です。組織全体におけるコミュニケーションコストを適切なレベルにし、生産性向上につなげましょう。