こちらのコラムでは、無料で使える情報共有のためのビジネスノートツール「welog(ウィーログ)」の運営スタッフが、ビジネスにおける情報共有やナレッジマネジメントについて発信しています。少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
目次
「ある業務を特定の社員のみができる状態」を意味する「属人化」。業務が「組織」ではなく、「特定の社員」に属した状態でもあるため、属人化が進むとさまざまな問題が発生するリスクがあります。属人化は、どのような方法で解消できるのでしょうか。今回は、属人化によるリスクや解消するメリット、属人化を解消して業務を標準化する方法などを紹介します。
「welog」は、メンバーのノウハウやナレッジを見える化することで
中小企業の属人化問題を解決するドキュメント共有ツールです。
属人化とは、「ある業務を担えるのが特定の社員のみ」という状態のこと。「業務・役割が特定の人のものになっている状態」とも言えます。
通常、業務は部署・チーム単位で行うのが望ましい状態ですが、属人化してしまうと、特定の社員のみが業務を担うことになります。属人化が進んだ職場では、実際に業務を担当している特定の社員以外に、その業務内容や業務の進め方がわかっている人がいないということも珍しくありません。そのため、基本的にネガティブな意味合いで用いられます。
業務の属人化は、仕事内容の「ブラックボックス化」につながるとされています。仕事内容のブラックボックス化とは、「どのようなプロセスを経て、成果物が生み出されているのか」「各プロセスにどの程度時間がかかっているのか」などがわからない状態のこと。
属人化が進んだ職場では、「成果が出ているから、問題ない」と業務内容・プロセスの可視化が後回しになりがちなため、「ブラックボックス化」が進行しやすい傾向にあります。加えて、テレワークの普及により、業務の属人化による仕事内容の「ブラックボックス化」が加速する可能性が高まっています。
業務が属人化し、仕事内容のブラックボックス化が進むと、どのような問題が生じるのでしょうか。業務の属人化による5つのリスクを紹介します。
属人化が進むと、属人化された業務がボトルネックとなり、部署内・社内全体の業務が停滞することがあります。担当者の休みが続いた場合や他の業務に追われて属人化された業務に着手するのが遅れた場合、その業務は一向に進みません。臨時的に別の社員が担当しようとしても、業務の進め方がわからず、かえって時間がかかってしまう可能性も生じます。このように業務スピートが低下すると、長時間労働を誘引しかねません。また、業務に遅れが生じた結果、納期に間に合わなくなってしまうと、会社の信用や利益の低下にもつながるでしょう。
担当者がどうしても属人化された業務に従事する時間がなく、納期までの日数も少ない場合、他の社員がその業務を担当せざるを得ません。「属人化された業務の進め方を知っているのは、特定の社員だけ」というケースも多いため、別の社員が取り組むと、同レベルの品質を担保できない可能性があります。試行錯誤してやり直したとしても、本来の担当者の業務レベルに達するのは難しいでしょう。その業務に慣れていない社員同士では成果物のチェックもままならないため、仮に不具合があったとしても気付かないことも考えられます。
チームで取り組んでいる業務の場合、ミスが発生した際に上司やチームメンバーに速やかに報告し、解決策を考えることで、ミスによる損害が大きくなるのを防げます。しかし、属人化が進んでいる職場では、担当者がミスに気付かなかったり、ミスを隠そうとしたりすることにより、ミスの発見が遅れる可能性があります。特に、属人化された業務に関する進捗報告の機会が少ない職場では、ミスの発見が極めて困難になるでしょう。
業務の属人化には、社内の風通しを悪化させるリスクもあるとされています。なぜなら、担当者以外の社員からは様子が分かりにくく、日常的な意見交換やアドバイスができないためです。こうした状態が継続することにより、次第に社内でのコミュニケーション量が減少し、社内の風通しが悪くなる可能性があります。社内の人間関係にも悪影響がもたらされ、社員にとって居心地の悪い会社となってしまうでしょう。
属人化した業務については、上司でも詳細を把握していないケースが少なくありません。そのため、担当者の「業務の質の高さ」や「業務遂行に必要な知識の習得度合い」などを判断できず、適切な人事評価が困難になります。その結果、担当者が「自分の仕事ぶりを、きちんと評価してもらえない」と不満を抱いたり、周囲のメンバーが「本当に、●●さんは評価に値するだけの仕事をしているのか」と疑問に思ったりするようになるでしょう。
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属人化しないよう特に注意が必要とされているのが、「全従業員や顧客との関わりが深い業務」です。こうした業務が属人化し、ミス・トラブルが生じると、社内外への悪影響が懸念されます。
属人化を特に防ぐべき4つの業務を紹介します。
人事、総務、経理といったバックオフィス業務は、「誰でも、同じクオリティで業務を担う必要がある」業務です。特定の社員しか対応できない状態では、担当者の不在時に「契約書や申請書などの処理を期限内に行えず、営業部門の業務が滞る」「専門知識がない中、給与計算を進めることでミスが生じ、全従業員に迷惑をかける」といった問題が生じる可能性があります。
社内外で発生したトラブル・セキュリティについては、迅速・的確な初動対応をできるかどうかで、その後の被害の大きさ・深刻さが左右されます。特定の担当者しかトラブル・セキュリティ対応ができなかったり、担当者の不在時に別の社員が通常とは異なる対応をしてしまったりすると、大問題に発展するリスクがあります。
自社製品・サービスの説明は、「既存顧客への対応」や「顧客の新規開拓」をする上で欠かせない、重要な業務です。この業務が属人化してしまうと、「担当する社員によって、言っていることが違う」「HPに載っている情報と実際の説明に相違がある」といった事態が生じ、顧客が混乱する可能性があります。
複数人が関係する業務を滞りなく進めるために重要なのが、「問い合わせへの対応フロー」や「プロジェクトの進行フロー」などに代表される案件・プロジェクトごとの対応フローです。この業務が属人化し、社員によって対応フローが大きく異なる状態になると、業務の進捗管理が困難になる可能性があります。その結果、「納期に間に合わない」「業務がどこでストップしているのかわからない」といった事態を引き起こしかねません。
これら4つの業務に関しては、属人化しないよう、特に注意を払いましょう。
なぜ属人化が起きるのか、その原因を見ていきましょう。
「特定の業務に対応できる人が限定される」ということが、属人化が起きる最大の要因です。特に「高度なスキルが必要とされる専門性の高い業務」や「背景を詳細に理解していないと、対応が難しい業務」の場合、担当者が限定されやすい傾向があります。「他の社員が担当するよりも、特定の社員のみが担当した方が早い」「他の社員が担当すると、質を担保しにくい」といった事情も相まって、属人化が加速すると考えられます。
属人化された業務の業務量が多くなると、当然のことながら、担当者は多忙になります。すると、「属人化解消に向けた提案」や「業務マニュアルの作成」などを行うのに必要な振り返りの時間を持てなくなる可能性があります。また、こうした状況では、他のメンバーも同様に多忙であることが多いため、「属人化されてしまっている業務がある」ことに気付かないというケースも考えられます。特に、チーム・部署全体の業務量に対して人員が不足している場合、これらの問題が顕著です。
「業務の洗い出し」「業務マニュアルの作成」といった属人化を解消するための業務は、企業の利益にただちに直結するものではありません。そうした業務を行っても評価されにくいため、主体的に属人化を解消しようという動きがなかなか生まれにくい傾向があります。また、互いの業務にふみこんでいくことへの心理的抵抗も、属人化を助長するとされています。
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リスクが多いとされている属人化ですが、逆にメリットがある場合もあります。例として、「慣れた業務や得意とする業務に集中して取り組めるため、従業員エンゲージメントが高まる」「社員の人柄次第で売上が左右されやすい販売職・営業職の場合、属人化した方が高い売上が見込まれる」といったことが挙げられます。そのため、属人化された業務全ての見直しを図るのではなく、「属人化を解消する必要があるのは、どの業務か」を見極めることが重要です。
一般的に、属人化は「リスク」の方が「メリット」よりも大きいとされています。業務が属人化した場合、短期的に見れば従業員エンゲージメントや売上などの向上が期待できることもある反面、長期的に見ると「業務スピードの低下」「ミスの発見がの遅れる」といったリスクにつながる可能性が高いためです。こうしたリスクに直面すると、企業としての業績や生産性の悪化にもつながりかねません。属人化にはメリットもあるものの、リスクの方がはるかに大きいということを、全員がしっかり認識しましょう。
「属人化された業務」と「スペシャリストの担う業務」は同じなのではと疑問を抱く方もいるかもしれません。しかし、両者は似て非なるものです。
両者には、「業務が見える化されているか」「他者よりも優れた専門性を有しているか」といった違いがあります。属人化された業務の場合、基本的に業務が見える化されておらず、かつ高度な専門性が必要とされないことも少なくありません。一方、スペシャリストが担う業務では、業務が見える化されており、かつ他のメンバーよりも突き抜けた専門性が発揮されます。
営業の仕事を例に取ると、営業マニュアルに書かれている以上にセールストークが上手で、他のメンバーよりもずば抜けて営業成績がよい場合には「スペシャリスト」と言えます。一方で、特定の顧客への営業を1人のみで行っているため業務が見える化されておらず、営業スキルも特別優れていない場合には「属人化」と言えるでしょう。
属人化と反対の意味を持つ言葉として、業務の「標準化」があります。標準化とは、誰でも同じ業務ができるように作業内容を統一し、最適化すること。
属人化を解消し、業務を標準化することで、これまで一人しかできなかった業務に複数人で対応できるようになります。社内にナレッジが蓄積されやすくなり、情報共有も盛んになるため、「業務の効率化」や「業務品質の向上」「進捗管理の円滑化」などが期待できるでしょう。
業務の標準化には、「担当者の不在・退職時にも柔軟に対応できるようになる」というメリットもあります。誰でも業務にあたることができるので、もし業務担当者が急に欠勤・退職したとしても、滞りなく業務を進められるでしょう。
また、業務内容が明確になり、進捗管理も容易になることから、在宅勤務を始めとするテレワークにも対応しやすくなると考えられます。
関連記事:業務標準化とは。重要性やメリット、進め方のコツなどを紹介
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属人化のリスクを軽減するためには、業務の標準化を進めていく必要があります。属人化を解消し、標準化するフローを紹介します。
属人化を解消し、業務を標準化する4つの方法
・業務内容や業務フローを見える化する
・フローチャートや業務マニュアルを作成する
・業務を分散する
・PDCAを回していく
まずは、チーム・部署内の業務内容・業務フローを見える化する必要があります。「どの業務が属人化しているのか」「誰がどのような手順で、属人化された業務を進めているのか」などを明らかにしましょう。属人化された業務の詳細は、担当者本人しか知らないというケースも多いため、担当者に直接ヒアリングすることが重要です。担当者への確認漏れがないよう、ヒアリングの際は、特に重点的に確認したい項目をリストアップしておくとよいでしょう。
担当者へのヒアリングにより業務内容・業務フローを把握したら、フローチャートを作成します。「何の作業から始まり、何の作業で終わるのか」業務の流れをフローチャートにまとめましょう。フローチャートができたら、それをベースに業務マニュアルを作成します。チームの誰もが各作業を理解できるよう、業務マニュアルには「作業Aでは、具体的にどのようなことを行うのか」「作業Bをする前には、何を確認するのか」といった詳細を記載しましょう。 担当者へのヒアリングを定期的に実施し、「業務マニュアルの記載内容に不足がないか」「業務マニュアル作成後に、変更になった作業はないか」などの確認や、業務マニュアルの見直しを行うことも重要です。業務マニュアルのブラッシュアップを繰り返すことで、より実用性の高い業務マニュアルになっていくでしょう。
フローチャートや業務マニュアルを作成したら、チーム・部署に共有し、全員で内容を確認します。一人ひとりが内容を理解できたら、実際に業務を分散します。その際、「業務」だけでなく「責任」も併せて分散すると、一人ひとりが自らの役割をより認識しやすくなるでしょう。
実際に標準化を進めていく中で、「マニュアル通りだと、業務がうまく進まない」「予想外の出来事が起きたときに、対応できない」といった課題が見つかることもあるかもしれません。標準化をしたらそれで終わりとするのではなく、PDCAを回していくことが重要です。定期的に現場の状況を確認し、必要に応じて見直しを行いましょう。
属人化を解消するために必要なフローチャートやマニュアルは、紙で配布する方法もありますが、クラウド上に情報を蓄積できる「情報共有ツール」で作成すると簡単に共有し、必要な情報を整理することにもつながります。属人化解消に役立つ情報共有ツール「welog」について、ご紹介します。
welogは、「必要な情報を簡単に残せる。必要な情報が簡単に見つかる」をコンセプトとする、チームのための情報共有ツールです。誰でも簡単に議事録や日報を作成・共有したり、社内wikiをまとめたナレッジデータベースとして活用したりできるため、ナレッジ共有や属人化解消につながります。まずは、無料でお試しできますので、属人化解消に向けた情報共有ツールをお探しの方は、ぜひ実際に使ってみてください。
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商業印刷を専門としている新星印刷株式会社は、「議事録を残す習慣がない」「タイムリーな情報共有ができない」などの理由で、ナレッジ共有に課題を抱えていました。これらの課題の解消に向け、welogを導入。これにより、「議事録作成の習慣化」「適時の情報共有の実現」に繋がるといった効果を実感したようです。
さらに、今後は社内に多数ある「独自のノウハウが必要な業務」を「welog」に書き溜め、業務マニュアルとして利用することを検討中とのこと。「welog」に業務マニュアルを集約することで属人化を解消し、「誰が休んでも、互いにフォローできる」「新人が、すぐに仕事を覚えられる」環境の構築を図っていくそうです。
関連記事:事例紹介『新星印刷株式会社|働き方改革と情報共有の効率化が同時に達成できました』
業務の属人化を放置すると、「仕事内容のブラックボックス化」や「業務スピードの低下」といった問題が起きる可能性があります。属人化を解消するためには、誰でも業務に取り組める状況である「標準化」を目指すことが重要です。「業務内容・フローの明確化」や「フローチャート・業務マニュアルの作成」などにより標準化・脱属人化を実現し、業務効率化や生産性向上につなげてみてはいかがでしょうか。