こちらのコラムでは、無料で使える情報共有のためのビジネスノートツール「welog(ウィーログ)」の運営スタッフが、ビジネスにおける情報共有やナレッジマネジメントについて発信しています。少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
目次
個人の経験や勘に基づく「コツ」「ノウハウ」などに代表される、言語化できない知である「暗黙知」。言語化されている知を意味する「形式知」とは、反対の性質を持ちます。「業務の属人化防止」や「組織全体の業務効率化」などのためには、暗黙知を形式知に変えていくことが重要とされています。そこで今回は、暗黙知の定義や暗黙知のままにしておくことのリスク、暗黙知を形式知に転換する方法などを解説します。
「welog」は、メンバーのノウハウやナレッジを見える化することで
中小企業の属人化問題を解決するドキュメント共有ツールです。
暗黙知とは、「言語化されていない知」のこと。「言語化するのが難しい知」とも言えます。代表的なものとしては、特定の業務を円滑に進めるための「コツ」や、長年の経験に基づく「ノウハウ」などがあります。英語では、「tacit knowledge」と表現されます。
暗黙知という言葉を誰が使い始めたのかについては諸説ありますが、初めて提唱したと言われているのは、ハンガリー出身の学者マイケル・ポランニーです。著書『暗黙知の次元』において、暗黙知を紹介しました。具体的には、「人の顔を区別できること」や「自転車に乗れること」を「知っていること」と見なし、その意識の下にある認識を暗黙知として位置づけています。
料理を例に、暗黙知の具体例を見ていきましょう。例えば、以下のようなことが暗黙知に該当します。
●「味付けは目分量」「焼き・煮込み時間は、様子見」といった主婦の勘
●見たり、感じたりしながら子どもに伝えてく、家庭の味の作り方
経験・勘に基づいた、周囲に言葉で伝えにくいものが暗黙知だと理解するとよいでしょう。
暗黙知と反対の意味を持つのが「形式知」です。形式知とは「言語化されている知」のこと。例えば組織内にある「業務マニュアル」や「作業手順書」「社内wiki」などは、形式知にあてはまります。
また最近では、「暗黙知」「形式知」に次ぐ第3の知識として、「実践知」への注目が高まっています。「実践知」とは、実践の場で適切な状況判断をするために必要とされる、経験に基づく暗黙知のことです。より実践的な暗黙知が、「実践知」だと理解するとよいかもしれません。
下の概念図は、氷山を例に形式知と暗黙知の関係について説明したものです。形式知は氷山の一角として表に出ているのに対し、暗黙知は水面の下にあり表にでてきていない部分を示します。このように、暗黙知は明文化されていないという点で、明文化可能な形式知と異なる性格を持つものです。また図からもわかるように、表層に出ている形式知の下層には、より大きな面積を占める暗黙知があると言われています。
暗黙知と形式知の違いを表にまとめました。
料理を例にとると、以下のようなことが形式知に該当します。
●食材や調理方法などが具体的に記された、料理本。
●調味料・だしの容器に記載されている「何グラムの食材に対し、大さじ▲を使用」といった使用量に関する情報
具体的な数値・データで示され、周囲に伝えやすいものが形式知だと理解するとよいでしょう。
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ビジネスにおいて、暗黙知を暗黙知のままにしておくことは、企業にとってのリスクとなります。ここでは、どのようなリスクがあるか見ていきましょう。
暗黙知は、形式知とは異なり、その状態のままでは「書類」や「データ」として蓄積することが難しく、周囲にその内容を正しく伝えることも困難です。そのため、社内にある暗黙知を放置することで、「暗黙知を有するメンバーの退職により、業務を円滑に行えなくなる」「ナレッジを後任の担当者や、次の世代に継承できない」といった問題が発生する可能性があります。
言語化されていない暗黙知を活用できるのは、その暗黙知を有しているメンバーに限られます。仮に優れた暗黙知があったとしても、それを活用できる人が少数のみでは、企業にとってのメリットも限定的なものとなります。
暗黙知は、業務に精通した特定のメンバーが有しているケースが多いと言われています。そのため、暗黙知を有するメンバーは、周囲に作業を教える機会が多くなりがちです。自分の業務を中断してでも周囲に教えないといけない、という状況になってしまうと、暗黙知を有するメンバーの生産性は低下するでしょう。それにより、チーム・組織全体の生産性低下につながる可能性があります。
暗黙知を暗黙知のままにしておくと、このようにさまざまな問題が生じます。暗黙知のまま放置せず、形式知に変えていくことが重要です。
ナレッジマネジメントとは、専門知識やノウハウ、成功事例といった「ナレッジ」を社内で共有し、企業の成長につなげていく経営手法のことです。ナレッジマネジメントを行うためには、暗黙知から形式知への転換が不可欠とされています。
「SECIモデル」とは、知識創造のための継続的なプロセスモデルのこと。ナレッジマネジメントの基礎的な理論として、知られています。「共同化(Socialization)」「表出化(Externalization)」「連結化(Combination)」「内面化(Internalization)」の4つの言葉の頭文字を取り、「SECIモデル」と名付けられました。
「共同化」とは、共通経験を通じて、個々人の「暗黙知」への理解を深めるプロセスのこと。「ベテラン社員の作業を見て、新入社員が技術を学ぶ」といったように、個人間で暗黙知の伝達・獲得が行われます。このプロセスでは、「経験の共有」により、他人に共有しにくい暗黙知に対する理解を深めていくことが重視されます。
「表出化」とは、「共同化」で理解を深めた「暗黙知」を「形式知」に転換するプロセスのこと。複数人での熟考・議論を重ね、「言葉・文章」「図表」といった形で、共通の「暗黙知」を客観的な「形式知」に置き換えます。形式知に転換する際に認識のズレが生じないよう、論理的な話し合いを心がけることが大切です。
「連結化」とは、「表出化」で生まれた「形式知」を他の「形式知」と組み合わせ、新たな「形式知」を創造するプロセスのこと。形式知は、単体では組織内で十分に機能させるのが難しいとされているため、「表出化」の後には、「連結化」が必要です。このプロセスを経ることで、体系的・総合的なナレッジが作り出され、組織全体で活用できる「知的財産」へと生まれ変わります。
「内面化」とは、「連結化」により組織内で活用可能となった「形式知」をもとに、新たな「暗黙知」を生み出すプロセスのこと。一人ひとりが形式知を実務に取り入れることにより、形式知が暗黙知へと変わっていきます。
暗黙知へと変化した後は、「共同化」や「表出化」「連結化」を経て、再び「内面化」されます。「共同化」から「内面化」までの一連のプロセスが何度も繰り返されることで、新たなナレッジやイノベーションの創出につながっていくとされています。
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暗黙知を形式知に転換する際には、「SECIモデルの活用」の他にも、いくつか取り組むべきことがあります。暗黙知を形式知へと効率的に転換する方法を紹介します。
暗黙知を形式知へと転換し、ナレッジマネジメントを進めていくためには、「ナレッジリーダー」を決めるとよいとされています。ナレッジリーダーとは、ナレッジ活用のビジョンを策定したり、それを推進していく担当者のことです。ナレッジリーダーがリーダーシップを発揮することにより、「ナレッジ活用の重要性を全社員が認識する」「積極的にナレッジ共有しようとする空気が生まれる」といった変化が起こります。
「●●を効率的にする方法は、こうだ」「▲▲なときには、こうしたらよい」といったことは、暗黙知を有する社員にとって、ごく普通なことです。そのため、「暗黙知を有している」のにも関わらず、そのことに気づいていないということも少なくありません。社内にある暗黙知を形式知に変えていくためには、これまで意識して来なかった暗黙知を洗い出す必要があります。業務経験の長いベテラン社員や、優秀な成果を上げている社員などを中心に、暗黙知を洗い出してもらうとよいでしょう。
暗黙知を形式知に転換し、ナレッジマネジメントを行っていくためには、ナレッジの「共有」「創造」「活用」が必要とされています。そのために作る必要があるのが、これらを行う場や仕組みです。例として、「休憩スペースの設置」や「ミーティングの開催」「ナレッジ共有頻度に応じた社内表彰制度の創設」「社内wikiの活用」「情報共有ツールの導入・活用」などが挙げられます。そうした場・仕組みを作ることは、「イノベーションの創出」や「次世代へのナレッジの伝承」にもつながっていくでしょう。
企業やそこで働くメンバーが必要とするナレッジは、多岐にわたります。そのため、ナレッジの共有を効果的に行うためには、情報を一箇所に集約できる「情報共有ツール」の活用が不可欠です。ここでは、ナレッジ共有に役立つ情報共有ツール「welog」について、紹介します。
暗黙知やナレッジマネジメントについて学べる本を紹介します。
暗黙知の次元(筑摩書房:マイケル・ポランニー著、高橋勇夫訳)
暗黙知を提唱したマイケル・ポランニーの著書。創造的な活動にとって重要とされる暗黙知の構造を紹介しています。暗黙知について深く学びたい方にオススメの本です。
知識創造企業【新装版】(東洋経済新報社:野中郁次郎/竹内弘高著、梅本勝博訳)
10カ国語以上の言語に翻訳され、世界のビジネスに大きな影響をもたらした、経営学の世界的名著。経営学の分野に知識というコンセプトを取り入れ、日本企業におけるイノベーションのメカニズムを解明しています。ナレッジマネジメントについての理解を深めたい方に、オススメの1冊です。
暗黙知を効果的に社内で活用していくためには、暗黙知から形式知への転換が欠かせません。まずは、暗黙知と形式知について、理解することが重要です。その上で、「SECIモデルの活用」や「ナレッジを共有・創造・活用できる場・仕組みの構築」などにより、形式知への転換やナレッジマネジメントを進めていきましょう。暗黙知を形式知に転換することで、「属人化防止」や「業務効率化」につなげてみてはいかがでしょうか。
ナレッジマネジメントに役立つ情報共有ツール「welog」にご興味のある方は、こちらから詳しい情報を入手いただけます。