こちらのコラムでは、無料で使える情報共有のためのビジネスノートツール「welog(ウィーログ)」の運営スタッフが、ビジネスにおける情報共有やナレッジマネジメントについて発信しています。少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
目次
業務の進め方や基準などを総合的にまとめた文書である、「マニュアル」。マニュアルを整備する目的や、メリットを把握し、効果的なマニュアルを作成したいと考える方もいるのではないでしょうか。今回は、手順書・取扱説明書との違いやマニュアルの種類・メリットのほか、マニュアルの作成手順や運用時のポイントをご紹介します。
「welog」は、メンバーのノウハウやナレッジを見える化することで
中小企業の属人化問題を解決するドキュメント共有ツールです。
一般的な「マニュアル」の意味を辞書で引くと、「案内書・手引き」、英語で訳すと「manual」と明記されています。一方、企業においての「マニュアル」は、「業務の概要や進め方、ルールなどを網羅的にまとめた文書」です。マニュアルは、企業で一般的に使用する業務に関するマニュアルのほか、会社の理念や規則など社員の行動指針に関する内容も含みます。マニュアルとは、企業の業務全体を総合的にまとめた文書と言えるでしょう。
マニュアルと似たものとして、「手順書」や「取扱説明書」などがあります。マニュアルとこれらの文書との違いについて見ていきましょう。
手順書とは、「業務の工程など作業の進め方について書かれたもの」です。業務の進め方について書かれている「業務マニュアル」と手順書は似た性質を持ちますが、両者の違いは、「取り扱う情報の範囲の広さ」です。業務マニュアルは、業務全体のイメージや流れ、業務フローなど、取り扱う情報の対象範囲が広く、抽象度が高くなります。一方の手順書は、細かい作業手順を記載するなど、取り扱う情報の対象範囲が狭く、より具体的になります。
例えば手順書では、「在庫情報を〇〇に入力する」「A部品を〇〇にセットする」など、誰でも同じ品質の作業が行える具体的な手順が作業単位ごとに記載されているのが、特徴です。
取扱説明書とは、「機械やシステム等の使用方法や取扱方法を明記したもの」です。マニュアルとの違いは、業務を行うための手順や方法は記載されず、モノに対する仕様や取扱方法のみが書かれている点です。取扱説明書は、「機械やシステムの利用者のための文書」であると言えるでしょう。
ハンドブックとは、「特定の業務における頻出項目や重要事項などを簡単にまとめた文書」のこと。ハンドブックとマニュアルでは、内容の充実度や文書のボリュームが異なります。ハンドブックには特に重要な事柄のみを掲載するため、文書のボリュームはさほど多くありません。一方、マニュアルの場合、業務の進め方やルールなどさまざまな内容を網羅的に掲載するため、文書のボリュームは多くなります。マニュアルの内容を一部抜粋し、気軽に持ち運べるボリュームにしたものがハンドブックだと言えるでしょう。
手引きとは、「業務の大まかな内容が書かれた文書」のこと。「作業内容がどれだけ指定されているか」という点で、マニュアルと手順書は異なります。マニュアルでは作業内容がしっかりと指定されていますが、手引きではさほど詳しく指定されていません。
ひとくくりに「マニュアル」と言っても、その種類や内容はさまざまです。ここでは、企業で一般的に活用されるマニュアルについてご紹介します。
規範マニュアルとは、「企業の理念に基づく基本方針や社員の行動規範を定めた文書」です。「企業としての方向性」や「社員のあるべき姿」などが記載されており、その企業で働く社員の考え方の指標を記したものと言えるでしょう。
また、規範マニュアルには、法律や社会的ルールを遵守するための基準についても記載されるケースが多いようです。
業務マニュアルとは、「業務全体のフローや手順、注意事項や判断基準などを記した文書」です。業務の標準化を目的として作成されるもので、業務の進め方以外に業務上必要な知識なども記載されている、実務と関連が深いマニュアルと言えます。業務マニュアルを効果的に活用すれば、社員が業務をスムーズに進めることができるでしょう。
危機管理マニュアルとは、「地震や台風などの災害や、感染症の流行など不測の事態への対応を記載したマニュアル」です。不測の事態に対する各部署・社員の行動指針、具体的な対応方法を記載し、事業継続を脅かす恐れのあるリスクに備えるために作成します。また、危機管理マニュアルには、企業への被害を最小限に抑えるための「危機発生防止策」についても記載されることが多いようです。
教育マニュアルとは、「社員の教育や訓練のために活用されるマニュアル」のこと。企業理念や事業内容などの働く上で重要となる考え方や、業務知識やビジネスマナーなど、実務に活用できることまでさまざまな内容を記載します。企業によっては、研修用の教材や資料などを指して教育マニュアルと称するケースもあるでしょう。
「welog」は、メンバーのノウハウやナレッジを見える化することで
中小企業の属人化問題を解決するドキュメント共有ツールです。
なお、マニュアル作成ツールを使って簡単にマニュアルを作りたい方には、こちらの記事が参考になります。
参考:【無料ツールあり】マニュアル作成ツールとは?おすすめ5選を厳選して紹介
マニュアルを整備すると、どのような効果があるのでしょうか。ここからは、得られる4つのメリットをご紹介します。
メリットの1つは、社員が行う業務の品質を維持し、均一化できることです。マニュアルがないと、各自のやり方で業務を進めることになるため、「人によってやり方が違う」「ミスが生じる」「余計な業務時間がかかる」などの問題が起こる可能性があります。マニュアルを整備することで、社員が一定のレベルで業務を行えるため、業務の品質を担保することに繋がるでしょう。
マニュアルの整備は、業務の効率化や企業の生産性向上に役立ちます。マニュアルにより業務の内容を明確にすることで、社員が進め方に迷わなくなるため、調べたり相談したりする時間や手間の削減が可能です。社外からの問い合わせやクレームなどがあった場合も、マニュアルを確認して迅速に対応することができるでしょう。
特定の社員しか知り得ない知識やノウハウなどが存在する「属人化」の防止に繋がることも、マニュアルを整備するメリットです。属人化が進むと、その業務がボトルネックとなり、業務全体の遅延や、作業効率の低下などを招く恐れがあります。マニュアルを整備することで、属人化を防ぎ、社員全員が同じノウハウを持ちながら業務を行えるようになるでしょう。
マニュアルを活用することで、新入社員への教育や担当者への引き継ぎなどにかかる時間や手間のコスト削減が実現します。異動や退職などで担当者が変わった場合でも、マニュアルを活用して引継ぎをスムーズに行えるでしょう。また、それぞれの認識の違いから起こりがちな、担当者による教え方の偏りを防ぐことにも効果的です。
マニュアルの整備にはさまざまなメリットが期待できる一方で、デメリットも少なからずあります。マニュアルの整備により想定されるデメリットについて、見ていきましょう。
マニュアルを作成するためには、「マニュアルがカバーする業務範囲の把握」や「利用者・利用シーンの明確化」「マニュアルの構成案・目次作成」「文章記入・図版挿入」といった工程が必要です。各工程に多くの時間を要するため、マニュアルを一から作成しようとすると日々の業務に支障をきたし、一時的に業務効率が悪化する可能性があります。
「テンプレートを活用する」「マニュアル作成ツールを導入する」などの工夫をし、作成時間の短縮を図るとよいでしょう。
クラウド上で情報を一元管理できるツール「welog」を活用すれば、マニュアルの作成・更新を簡単に行えます。テンプレート作成も可能ですので、ぜひご検討ください。
マニュアルの運用後に注意が必要なのが、「マニュアルに記載の作業手順通りにしか動けない」社員が出てくる可能性です。マニュアルが業務の拠り所となることで、「マニュアルに記載があること以外は、全くしない」「マニュアルの範囲外のイレギュラー対応に難色を示す」社員が出てくるかもしれません。
「マニュアルは重要であるが、それだけが全てではない」「場合によっては、マニュアルに記載のないイレギュラー対応が発生することもある」といったメッセージを、マニュアルを通じて伝えるようにするとよいでしょう。
マニュアル通りにしか動けない社員が出てくることにより懸念されるのが、社員のモチベーション低下です。マニュアルを重視するあまり、「業務をどう進めるとよいか」自ら考える機会が減り、次第に仕事へのモチベーションが下がっていくことが懸念されます。
そもそも、マニュアルは一度作成すれば、それで終わりというものではありません。業務内容に変更が生じれば、併せてマニュアルも見直す必要があります。社員のモチベーション低下を招かないようにするためにも、「業務内容とマニュアルの双方の見直しが、顧客満足や働きやすさにつながる」「常に改善意識を持って、業務にあたることが重要」といった意識付けをしていくとよいでしょう。
社内でマニュアルを活用するためには、社員にとって使いやすいマニュアルを作ることが大切です。ここからは、マニュアルの適切な作成手順を見ていきましょう。
まずは、マニュアルがどこまでの業務範囲をカバーするのか把握することが必要です。「何についてどこまで記載するのか」大きな枠組みを決めておくことで、マニュアルを作る判断基準が明確になり、スムーズにマニュアルを作成することができるでしょう。
次に、「誰のためのものなのか」「どの業務に関するものなのか」「どの時点で確認するものなのか」など、マニュアルの利用者と利用シーンを明確にしましょう。その際にポイントとなるのは、「対象となる範囲を広げすぎない」ことです。範囲を広げすぎると、マニュアル作成にかかる時間や手間が増えたり、どこに読みたい情報があるのかわかりにくくなったりする場合があります。まずは主となるマニュアルを1つ作成し、それに付随したマニュアルを、順番に作成していくのがおすすめです。
マニュアルの対象範囲が決まったら、マニュアルの構成を考えた上で、目次を決定します。まずはマニュアルの骨組みである「構成案」を決めて、全体像を把握しましょう。そうすることで、マニュアル作成の流れが明確となり、記載内容の整合性がとれた、見やすいマニュアルを作成できます。目次を作成する際は、まず大項目を決めてから小項目へと内容を細分化していくとよいでしょう。また、時系列や担当者ごとに分けて記載すると、わかりやすいマニュアルとなります。
目次が決まったら、目次に合わせて内容を具体的に記載しましょう。内容を記載する場合は、あらかじめ文字の書式やサイズなどを決めておくと、スムーズに作成できます。
マニュアルは、社員に内容が伝わりやすいように図や表、動画などを効果的に利用するとよいでしょう。図や写真などの視覚情報を使えば、文字だけでは理解しづらい情報を、わかりやすく伝えることができるため、理解が深まるでしょう。
また、近年企業への導入が進むマニュアル作成が行えるクラウドサービスの中には、動画を挿入できるものもあります。動画を活用すれば、実際の「動き」を確認できるため、作業全体の流れや手順の理解に役立つでしょう。
「マニュアルの作り方」について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:わかりやすいマニュアルの作り方。業務や引き継ぎをスムーズにする作成のコツなど
「welog」は、メンバーのノウハウやナレッジを見える化することで
中小企業の属人化問題を解決するドキュメント共有ツールです。
マニュアルを作成する際に押さえておきたいポイントを紹介します。
マニュアルを作成する際は、「5W1H」を意識して記載しましょう。5W1Hとは、「いつ・誰が・どこで・何を・なぜ・どのように」を指す言葉のこと。5W1Hを意識することにより、内容が具体的になり、利用者の理解が深まります。
具体的には、 「この業務を行うのは、誰か」「どのタイミングで、この業務が必要になるのか」など、業務の流れが分かるように記載するとよいでしょう。
業務の目的・流れなどの全体像や、業務同士の繋がりを記載することも大切です。それにより、「なぜこの業務が必要なのか」など業務の役割が明確になり、その業務に関連するほかの部署との連携も取りやすくなります。その結果、仕事をスムーズに進められるようになるでしょう。
実際に業務を行う際には、マニュアルの記載通りに進まないケースも考えられるでしょう。そのため、イレギュラー発生時の判断基準を明確にしておくことが重要です。具体的には、イレギュラー発生時に、「何をもとに判断を行うのか」「どこまでは現場で判断し、どこからは上長や他部門への相談を仰ぐのか」などを定めておくとよいでしょう。
マニュアルには、想定されるトラブルへの対応策も記載しましょう。「過去のトラブルの発生原因」や「トラブル発生時に実際に行った対応方法」などを記載することにより、同様のトラブルの再発が防げ、万が一トラブルが発生した際にも迅速に対応することができます。トラブルやミスが特に発生しやすい工程については、「マニュアルにコメントを残す」「マニュアルの該当箇所を太字で記載する」などの工夫をするとよいでしょう。
マニュアルを初めて作成する方の中には、「作成手順やポイントは理解しているけれど、いざ作成するとなるとうまくいかない」という方もいるかもしれません。そこで、マニュアル作成に迷ったときにはどうしたらよいのか、具体的な対応策を4つ紹介します。
まずは、過去にマニュアルを作成した経験がある社員に相談することをおすすめします。マニュアル作成にあたり「工夫した点」や「うまくいった点」「見直しが必要だった点」など、マニュアル作成担当者ならではの経験談を聞くことで、マニュアル作成のヒントを得られるでしょう。
また、過去の担当者の経験談・アドバイスをもとに自社の既存マニュアルへの理解を深めることで、「書式やフォントサイズを揃える」「見出しから各ページに飛べるようにする」などの工夫も浮かびやすくなると期待できます。
「どのようなマニュアルが使いやすいのか」をイメージできない場合には、別のマニュアルの利用者に話を聞くことが効果的です。利用者の意見を集めることで、「利用者はどのようなマニュアルを欲しているのか」「マニュアル作成にあたり、何に注意すべきか」などのヒントが得られます。
なお、「スマホからも見やすいものの方が使いやすい」「もう少し字が大きいと見やすい」「対象者別にマニュアルを分けてほしい」といった具体的な改善提案があった場合には、まずは「なぜそういった提案があったのか」という理由を確認しましょう。併せて、「他の利用者にとっても、有益な提案かどうか」「その提案を採用しても、他のマニュアルとの整合性を維持できるか」などの観点で提案内容を精査することも大切です。その上で、利用者にとってより活用しやすいマニュアルとなるよう、提案内容をマニュアルに反映させることを検討してみましょう。
マニュアル作成が思うように進まない場合には、マニュアル化する業務の関連情報を収集・整理するのも効果的です。そうすることで、より広い視野で業務内容を把握でき、マニュアルの構成立てやマニュアル作成がしやすくなるでしょう。
マニュアルの種類・内容によっては、他社のマニュアル・テンプレートが参考になることもあります。マニュアル作成に迷いが生じた場合には、作成したいマニュアルと類似した他社のマニュアルがないかを一度確認してみるとよいでしょう。「構成の立て方」や「手順の伝え方」などの観点から他社のマニュアル・テンプレートをいくつか見比べ、中でも使いやすそうなものを参考にすることをおすすめします。
マニュアルは、社員が効果的に活用できてこそ、意味があります。ここからは、社内でマニュアルを活用するための運用ポイントをご紹介します。
ナレッジマネジメントとは、専門知識やノウハウ、成功事例といった「ナレッジ」を社内で共有し、企業の成長につなげていく経営手法のこと。ナレッジマネジメントは、ノウハウやコツなどの「暗黙知」を、マニュアルや作業手順書といった「形式知」に変換し、社内で活用するという流れで進みます。そのため、作成したマニュアルを現場で実際に活用することも、ナレッジマネジメントの一つと言えます。
ナレッジマネジメントの推進により、「暗黙知」から「形式知」への転換を促し、組織全体でのナレッジ活用・企業の成長につなげるという意識を全従業員にもってもらうことが大切です。そうすることで、実務におけるマニュアルの活用が自ずと進んでいくでしょう。
「マニュアルを作成するのは誰なのか」「マニュアルを管理するのは誰なのか」を明確にするために、事前に運営・管理の部署や担当者を決めましょう。運営・管理担当者を決めておけば、社内のマニュアルが効果的に運用されているのか把握・管理できるため、社内でマニュアルを定着させることに繋がります。担当者が決まったら、まずはマニュアルの作成目的や運用方法を社内に広報し、その重要性を社員全員に認知してもらいましょう。
マニュアルを効果的に活用するためには、マニュアルの内容を定期的に見直し、最新・最善の状態へアップデートすることが大切です。現場と上層部双方の意見を吸い上げながら、マニュアルを修正・改善していくとよいでしょう。
ただし、アップデートは、頻繁に行う必要はありません。マニュアルが変わりすぎて社員が混乱しないためにも、一定の期間を設けてアップデートを行うとよいでしょう。アップデートをする際は、「重要度の高いもの」「要望の多いもの」など優先順位を決めて行うのもポイントです。
マニュアル作成に、WordやExelといった、Office系のソフトを活用している企業も多いのではないでしょうか。Office系ソフトでのマニュアル作成には、「マニュアルの更新や共有に手間がかかる」「最新版がどれなのか、把握しづらい」などのデメリットがあります。
クラウド上で情報を保管できる「welog」なら、マニュアルの作成と更新が簡単に行えます。キーワードを使った検索機能を使えば、探したいマニュアルをすぐに閲覧することが可能で、マニュアルの共有もボタン一つで簡単に行えます。マニュアルをいつでも最新の状態で活用することが可能となり、効果的なマニュアルの作成と運用に繋がるでしょう。マニュアル作成には、情報共有ツール「welog」を、活用してみてはいかがでしょうか。
「welog」の無料登録はこちらからできます。
マニュアルについて深く学びたい方は、下記にご紹介する本も参考にしてみてください。
(日本実業出版社:工藤正彦著)
業務における「属人化」を解消し、個人の力を育み企業の生産性を高める「業務マニュアルのつくり方」を伝授する実践書です。1,500以上のマニュアルを手掛けた著者が、長年培ってきたマニュアル作成のポイントを惜しみなく解説。目標設定と洗い出しの「2つのステップ」を踏み、「オリジナルテンプレート」を活用することで、誰でも簡単にわかりやすいマニュアル作成が可能です。
マニュアルは、手順書や説明書と比べると抽象度が高く、判断基準や行動規範など、より総合的な内容が含まれるものです。マニュアルを整備すれば、社員の業務品質や業務効率の向上が期待できるほか、属人化の解消にも繋がるでしょう。マニュアルについて詳しく知りたい方は、マニュアルについて書かれた本も参考にできます。マニュアルの目的や作成手順、運用ポイントなどを理解し、社内で効果的にマニュアルを活用しましょう。